優しくないっ、優しさを感じない!
階段の所まで辿り着いた時、目に入ったのは誰も居ない、空っぽのグラウンド。
「…あれ?試合やってない?」
そんなはずは…とキョロキョロ辺りを見渡すと、どうやらちょうど休憩中だったようで、みんな部室の中や外でお弁当を食べている所だった。
その中にコースケを見つけたあたしは、名前を呼んで手を振った。するとあたしに気づいたコースケが階段の方まで駆けつけてくれる。
「本当に来てくれたんだな!」
ニッコリ笑うコースケの笑顔が眩しい。青春の爽やかさに満ち溢れている。
「そりゃね!しかもレナちゃんも来てくれたんだよ」
「うん。来ちゃいました…」
「な!霧野さんもありがとう、すげー嬉しいよ。午後も頑張んないとな!」
ニコニコニコニコ、コースケはすごく嬉しそう。そんなコースケを見るとレナちゃんと二人で来て本当に良かったなとしみじみ感じて…するとその時、レナちゃんはえっと…と、何かを鞄から取り出し始める。
「あの…あのね、中村君これ」
「え?何?」
おずおずと遠慮がちにレナちゃんが手渡したのは少し大きめの箱だった。それがコースケに手渡ると、レナちゃんは「実はうちのお母さんが野球の試合を見に行くって言ったら、どうしてもってきかなくて…」と、なんだか先ほどよりも更に小さくなったようにも思えるくらいに、申し訳なさそうに話し始める。