優しくないっ、優しさを感じない!
「じゃあな、ヒロ。迷惑かけないようにちゃんと良い子にしてろよ。霧野さん、クッキーほんとありがと。一人で食べないように気をつけるな!」
そして、軽やかに階段を駆け下りて行くコースケに「頑張ってー」と伝えて、あたし達はまたこの間のように二人で腰を下ろした。
それからはもちろん、野球観戦に徹した。ルールを知らないレナちゃんにここの所の勉強の成果を発揮したり、応援を聞きながら選手の名前を覚えてみたり、コースケの打順になったら思いっきり声を出してみたり。
そして気がついたらあたしはーーいつの間にか、コースケだけじゃなくて学校の選手皆を応援していた。
コースケが見たくてコースケに会いたくて行ったはずの試合。でも結局あたしは野球そのものを楽しんで帰って来て、その中の優秀な選手としてのコースケに、あたしはまた胸をときめかせていた。
ここぞという時に結果を出してくれて、重い雰囲気の時には率先して声を出し、皆を励まし引っ張っていく。ベンチに戻ってきた選手へ向ける笑顔はいつものコースケの笑顔なはずなのに、あたしにはより一層輝いた、特別なものに見えたりした。
いつものコースケとまた一つ、あたしは知らなかったコースケに惹かれたんだ。コースケは素敵で眩しくてキラキラ輝いていて……すごく、カッコいい。
コースケは、カッコいい。
家に帰ってきてからも、あたしはずっとふわふわした気分だった。今日一日の熱くて爽やかな感覚がずっと胸にあって、それからは結構長い間コースケの事がずっと頭にあった。