優しくないっ、優しさを感じない!


「…え?」


「タケル君?」と、なんだか気になるその名前に尋ねてみると、レナちゃんは慌てたように「な、なんでもないの」と笑ってみせた。


タケル君…タケル君…

…なんかどこかで聞いた事があるような。


……無いような……


最近思うけど、あたしの記憶力って結構しょぼしょぼな気がする。なんにも頼りにならない。


「…うん、まぁ気持ちが伝わったならあたしは嬉しいよ」


ーー結果、しょぼいあたしの脳みそがいけないという事で、とりあえずこの件に関しては出直す事にした。何かモヤッとしてるこの感じはきっと、あたしの中に答えがあるのだと踏んだからってのもある。


「…よし!じゃあ宿題も終わったし、外も暗くなって来たし、夏の思い出話も沢山出来たし、あたしそろそろ帰ろうかな!」


サッと立ち上がってあたしは鞄を手に取った。するとレナちゃんは少し残念そうな顔をしながらも「暗くなるし送るよ」と、ついて来てくれた。


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