優しくないっ、優しさを感じない!


そしてあたしは一人、ウキウキと階段を下りて学校を出た。

本当に無くならなくて良かった!これからはもっと大事にしよう!と、帰宅後の夜、ポーチの定位置にボタンを戻しながら心に決める。


でも今日は拾って貰えて良かったなー.… あたしだったら見覚えの無いボタンなんて拾わないかも。しかも今思えばあたし、やたらテンション上がっちゃってなんかめちゃくちゃ余計な事話してたよね、恥ずかしい。でもそれでもちゃんと聞いてくれてたなぁ。


うんうん。あの人良い人だったなーなんて改めて思ってると、ちょうどその時だった。手元にあったスマホがブブッと震えて、あたしは慌ててそれを確認する。


「あ!コースケ!」


差出人は大好きな彼。届いたのは“今日は疲れたー”なんていう本当に意味なんて無いような一言のメール。たまにこうやってやり取りをするような仲は昔のまま何も変わらなくて、それはきっとコースケが気を遣ってくれたからだと、そのおかげだとあたしには分かっていた。


「ふふっ、まずは部活お疲れ様ー…で、後は…そうだ、今日は良い人に会ったって教えよう。あの人の事コースケは知ってるかな」


独り言を呟きながら返事を考える。そこで思い浮かべたあの人に、ふと、頭をよぎる何かを感じた。


「ん?あれ?そういえばあの人って何て名前だろう…いや、ていうかもしかしてあの人、なんか前に誰かから名前聞いたような……うーん。なんかモヤモヤするのに思い出せない」


断定は出来ないけど、今更ながらになんか知ってる気がする。でも今思い出すほど重要でもないか…てことでとりあえず今は置いといて、適当な返事で送信する事に決めた。


コースケに卒業式の日に告白してフラれて…その時高校でもよろしくとは言ったものの、結局やっぱり気まずさを捨て去れはしなかったあたし。

でもそんなあたしにコースケは今まで通りに接してくれて、気づけばあたしもまるで何事もなかったかのように、元通りに話したりなんだり出来るようになっていた。そんな感じに見えないのに、そうやって気遣いが自然と出来る所も…やっぱり、コースケは他の人と違ってすごいと思う。


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