優しくないっ、優しさを感じない!
「あぁ、コレ?結構前に流行ってた洋楽のヤツなんだけどたまたま持っててさ、霧野さんが好きだって言ってたからこの間貸す約束したんだよな」
「うん。曲名とか忘れちゃってなかなか探せなかったから、持ってるって聞いてすごい驚いちゃった。でもよく分かったよね、あの時の鼻歌だけで」
「いやぁ俺も結構聞いてたからさ、もしや!みたいな。まさか当たるとは思わなかった」
「本当だよね。でも分かってもらえてよかったよ、それに貸してもらえて…今日帰ってから聞くのが楽しみ!」
そしてもう一度「ありがとう」と、可愛らしい笑顔で告げるレナちゃん。あたしはそんな二人のやり取りを見て、「そうなんだ」の一言を、出てるかどうかもよく分かんない声量でポツリと呟く事しか出来なかった。
…だってその時、レナちゃんの表情を見た後チラッと視線を向けた先、あたしは見てしまった。その時のコースケの表情をハッキリと見てしまったから。
…無意識にも、あえて一瞬しか確認しなかった。
でも一瞬だけど、それが分かった。
そして一瞬なのに、それはあたしの目に焼き付いて離れなくなってしまった。
…あんなコースケ、見た事無い。
コースケは、レナちゃんの仕草に驚いたような、そして動揺を隠そうとして失敗してしまったような、何より喜んでもらえた事が心から嬉しそうな、そんな表情を浮かべていて、温かで穏やかなのにどこか強い感情が溢れる、そんな眼差しでレナちゃんを見つめていた。
ジッと、きっとあたしが目をそらした後も、ずっと。
……これはきっと…
いや、絶対。