優しくないっ、優しさを感じない!
始めに浮かんだのはその言葉。固まったままの身体をそのままに、あたしは先に動き出した思考の方に集中し始める。
進藤があたしを、嫌って無い…?
あたしを心配してここに来た…?
「……う、嘘だ」
…大きな驚きと動揺に、飲み込まれる。
「嘘だ、そんなの信じない」
だからこそ、流されてはダメだとあたしは自分に言い聞かせた。今までの出来事を思い返せば、全ては裏付けされたようなもの。
「じゃあなんで進藤はいつも教室に居たの。レナちゃんに頼まれたからじゃん」
「だから、頼まれたって俺の意思がなきゃ行かないって言ってんの」
「でも進藤はあたしに冷たかった。相談なんてのってくれなかったし、全然優しくしてくれなかった。それって本当は嫌いって事じゃん」
「それも前に言った。もしおまえが優しくされたいなら、俺の事好きになればいいって」
「だから、それが意味分かんないんだよ!なんでそうなるの?そんなの、そんな事言ってまでしてあたしに線引いてるとしか思えない!」
「そりゃあね、引いとかないと。だっておまえ、俺の事好きじゃないでしょ?」
「別に嫌いじゃないもん、むしろ好きだよ!そんなの進藤だって分かってたはずじゃん!」
「…そうだね、分かってた。だからだよ。だから俺はそんなのじゃ満足出来ない」
「いや、満足って、優しくするのに満足とか関係、」
「言ったよな?俺は意味のある人間には優しくするし、優しくして見返りがある人間にもそうする。だから俺は俺に好意を持ってる人間には優しくする」