優しくないっ、優しさを感じない!


始めに浮かんだのはその言葉。固まったままの身体をそのままに、あたしは先に動き出した思考の方に集中し始める。


進藤があたしを、嫌って無い…?

あたしを心配してここに来た…?


「……う、嘘だ」


…大きな驚きと動揺に、飲み込まれる。


「嘘だ、そんなの信じない」


だからこそ、流されてはダメだとあたしは自分に言い聞かせた。今までの出来事を思い返せば、全ては裏付けされたようなもの。


「じゃあなんで進藤はいつも教室に居たの。レナちゃんに頼まれたからじゃん」

「だから、頼まれたって俺の意思がなきゃ行かないって言ってんの」

「でも進藤はあたしに冷たかった。相談なんてのってくれなかったし、全然優しくしてくれなかった。それって本当は嫌いって事じゃん」

「それも前に言った。もしおまえが優しくされたいなら、俺の事好きになればいいって」

「だから、それが意味分かんないんだよ!なんでそうなるの?そんなの、そんな事言ってまでしてあたしに線引いてるとしか思えない!」

「そりゃあね、引いとかないと。だっておまえ、俺の事好きじゃないでしょ?」

「別に嫌いじゃないもん、むしろ好きだよ!そんなの進藤だって分かってたはずじゃん!」

「…そうだね、分かってた。だからだよ。だから俺はそんなのじゃ満足出来ない」

「いや、満足って、優しくするのに満足とか関係、」

「言ったよな?俺は意味のある人間には優しくするし、優しくして見返りがある人間にもそうする。だから俺は俺に好意を持ってる人間には優しくする」

< 160 / 310 >

この作品をシェア

pagetop