優しくないっ、優しさを感じない!


『…ヒロ?』


…ギュッと、苦しくなる。

ツンと張り詰める。


その後、パァ…っと何かが広がっていく。


これは…この感覚はーー


「…あ、う、ううん、なんでも無い…」


あたしの胸に広がったもの、それは今、とても清々しくて、キラキラと輝いていた。あたしを心配してかけてきてくれた事、彼の声が聞けた事、それがあたしのためだという事を実感した瞬間、それはあっという間に広がっていった。それら全てがあたしの心の中に染み渡っていったんだ。それをきっと…この感覚はきっとーー


ーーそうか、これは感動だ。


あたしは、感動したんだ。


そんなあたしの想いはきっと、電話越しでは伝わらない。でも伝わらなくて良かった。こんなあたし、バレないで良かった。こんなあたしがいたらコースケも絶対可笑しく思う、変わってしまう。いつも通りのコースケの声が聞きたい。いつも通りが、やっぱり一番良い。あたしが感動したのはやっぱり、いつも通りのコースケからのものだったから。

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