優しくないっ、優しさを感じない!


じくじく、むかむかする。

取れない、無くならない。吐き出したのに胸は辛くなる一方。やっぱりあたしが吐き出したかったのはこれじゃなかったんだ。

…じゃあ、一体何を吐き出したかったの?


すると、電話の向こうで『そっか、バレちゃってんのか…』なんて、呟く声がする。それにハッと我に返ったあたしは、そういえばあたし、レナちゃんにはバレてないってちゃんと言ってない!なんて、コースケにとって完全に重大な問題を伝え忘れた事に気がついた。


「あの、コースケ、」

『でもま、仕方ないか』

「…え?」

『ヒロに分かるくらいだしな。俺も相当なんだろなぁ、外から見たら。すげー恥ずかしい』

「……」

『でも仕方ないんだよ、勝手にそうなっちゃうっつーか、しちゃうっつーか、なんかもう一杯でさ…カッコ悪いよなぁ、俺』

「……」


そんな言葉と声を聞いたあたしの頭には今、恥ずかしそうに笑ってるコースケの顔が思い浮かんでいた。笑ったような声は聞こえて来ないけど、きっと今コースケはそんな顔をしてる。困ったみたいに眉毛を下げて、でもいつもみたいに笑おうとしてる。あたしには分かる。声を聞いただけで分かる。

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