優しくないっ、優しさを感じない!


ーー目を覚ますと、見渡した部屋の中はなんだか薄暗くなっていた。あたしはそのまま窓の外へと目をやる。すると外はもう夕焼けの赤の後にやって来る藍色へ変わる準備を始めていた。


…すっかり寝ちゃってたな…


のろまな動きで上半身を起こす。頭がぼーっとして重くて、奥の方がガンガンした。瞼もなんだか開きが悪くて、多分普段の半分くらいしか開いてない。


結局大泣きしたもんなぁ…泣くのって疲れる。久々に泣いたから余計にかな。


一人でうじうじメソメソ泣いてる自分を想像するとすごく恥ずかしかったけど、でもそのおかげだろうか。気持ちは随分と落ち着いたみたいだった。

今心を占めるのは清々しさの方が強いって素直に言える。ただもちろん、どうしようもない虚無感も微かにある事は事実で、それから目を逸らす事は出来ない。

…それもそうだ。あれだけ私を占めていたもの、それを違う形で受け止めて、手放す事にしたんだから。隙間ができるのは当たり前だ。

でも良かった。本当に良かったんだと心から思う。感じるのは達成感。一つの区切り。

これでもうあたしは、もう一人の大切な人とも向き合う事が出来る。

真っ直ぐに、彼女の元へと向かう事が出来る。
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