優しくないっ、優しさを感じない!


…やっぱり、指摘された。隠せなかったのはそれ。弱々しく出てきた声は確かに震えていた。震えてしまった。


「…別に、震えてないもん」

『そう?じゃあ電波が悪いのかな』

「そう、それ。電波がめっちゃ悪いんだ。進藤の声も震えて聞こえるもん」


嘘だ。電波なんて悪い訳が無い。そんな事はきっと進藤だって分かってた。分かっててきっと、あたしにそう言った。


あたしだって分かってる、それが進藤の気遣いだって。でもあたしはそれだそれだと、バレてるのは分かっていながらも強く同意した。だって認めるのはシャクだった。それにもう震えてない、始めの一回だけだ、もう大丈夫なんだからそれはもう震えて無いのと同じようなもんだ。


すると進藤はそんなあたしに対してだろう、電話の向こうで小さく笑う。そして『そういう事なら仕方ないね』と呟く声が、なんだかあたしにはとても温かく感じて…なぜか無性に切なくなった。


ーー切ない。


ギュッとなるのは…なったのは、どこ?


進藤が優しいと何か変だ、変な感じになる。優しい…あぁそうだよ、優しいんだ。進藤の声が優しい。


…なんだろう。どうしよう。


「進藤」

「ん?」

「あたしさ…あたし、分かんなくて」



あたしは、それに促されるように口を開いた。



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