優しくないっ、優しさを感じない!
『分かんない?』
『何が?』と、進藤が尋ねてくる。
…尋ねてくれる。聞いてくれる。
「…あたし…あたしの事が、分かんないの。なんかもう、分かんなくて。信用出来なくて…」
『……』
「あのね、ずっと知ってたあたしと違うあたしがね、居るの。ずっと居るの。あたし、そんなの初めてで、でもそれもあたしだって分かってるから、だから受け止めて、それでやっと上手くいけそうなんだけど…だけどね、もしまたそれが出てきたらと思うと…それにもっと違うあたしがまだまだ居るかもしれないと思うと…やっぱりどうしても、なんか今のあたしの想いとか決意が信じられなくなっちゃって…」
『……』
「…結局、あたしってどんな人間なんだろう、なんて思っちゃうんだ。そんなに何個も想いがあって別のあたしが居るんじゃ、あたしの本物の気持ちはどれなんだろう、なんて。どうしたらそんな自分を信じられるんだろう、なんて」
『……』
「明日のあたしは今のあたしとは違っちゃうかもしれない。レナちゃんを前にしたらまたあたしは…もしそんな事になったら今度こそ本当に…なんて思うと、やっぱり怖くて…どうしてもそこから抜け出せなくて…だから、その…」
『……』
「……進藤?…聞いてる?」
『聞いてるよ。だから、何?』
「え?」
『抜け出せなくて、だから、の後。だからどうしたの?』
「?…だから…進藤に、電話した」
『…うん。つまり?』
「…つまり…?」