優しくないっ、優しさを感じない!


『そこで妥協してしまう道もあったはず。自分はこれだと決めないで上手く折り合いをつけるって選択肢もあった。一つを心に抱いたままもう一つの自分でいる、自分の想いを二つ抱いたまま何事もなかったかのように上手くやり過ごす、そんな手段だってあったはずだけど…正直、おまえにはそんな器用な事出来ないよな。おまえは二つのうち正しい自分を一つ選ぼうとした。でももう一つを見ない振りなんて出来なかった』

「……」

『でも、最後におまえは分かった。在るべき自分を見つけて、自分の中の二つの想いに折り合いがつけられた。それが一番だと、それが自分なんだと受け入れられる自分を見つけた。そうなんだろ?』

「……」


…あたしは見つけた。どんな自分を?


「…うん、見つけた。あたしは決めたんだ、コースケを応援するって。そしたらスッとして色んな事が分かったんだ、てゆーか気付いた…というか」

『うん』

「あたしがなんでこんな風に思ってたのか…とか、コースケへの気持ちの受け止め方の…なんか、正しい在り方、とうか、なんか自分でも納得して受け入れられる形とか、それと後、分からなかったレナちゃんとの向き合い方とか。あたしがどうなれたら幸せか、コースケの気持ちをね、理解したら…分かったの。あぁこれかって」

『…うん』


…そうか、そうだよね。自分で見つけた、一番望んだ自分。自分らしい自分の在り方。

これって気づいたら出来上がってた。

全部を受け入れて納得して前を見たらーーそこに居たんだ、新しい自分が。

< 189 / 310 >

この作品をシェア

pagetop