優しくないっ、優しさを感じない!


…進藤は今、どんな顔をしてるんだろう。

どこでどんな表情で、どんな気持ちでこんな事を言ってるんだろう。

なんであたしにこんな事してくれるんだろう。

なんでこんなに優しくしてくれるんだろう。


なんでこんなに…あたしはこんなにーー…



「…進藤に、会いたいな…」


『…え?』

「……え?」



…そして、しばしの沈黙。


その間に理解する、あたしの頭。


あたし…今、とんでもない事を、口にして…しまった…ような…ではなく…っ、


「いやっ!その、違っ、」

『いいよ。会いに行ってやろうか?」

「ほんとごめんなさ、…へぇっ⁈ 」


な、な、ななな、


「なんて…いや、なんで?いや、そんなはず、それは違っ…いや、えっと…」


何がどうなったと、パニックになるあたしの頭の中。するとそんなあたしの耳に聞こえてきたのは大きな笑い声。

楽しそうでいてどこか嬉しそうでもある、あたしからしたら珍しくも感じる笑い声を散々聞かせたその後、収まりを見せたそれの隙間に『なんてね』なんて言葉を挟みながら結局、奴はもう一回笑った。

あたしはもう、我慢出来ないくらいのそれがどこにあったのかと、素直に不思議にしか思えなかった。


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