優しくないっ、優しさを感じない!


「なんか最近体調悪い子が多いわね」

「そうだよね。だからいいよね?」

「…まぁ、その様子じゃ授業にもなんないだろうしね。でも落ち着いたら戻るのよ?」


そう言うと、先生はレナちゃんとあたしを意味有りげにじっくりと交互に見た後、


「さて。私は職員室に用があって一時間くらい戻らないけど…神崎さんはちゃんと教室に戻りなさいよ。戻ってきた時ここに居ないように」


なんて言い残して、スタスタと当たり前のように保健室を出て行ってしまい…あたしは、ポカンとその後ろ姿を眺めてしまった。


あっさりと去っていった先生の残した言葉。その意味は…改めて考える必要もないくらいに、分かりやすいもので。


「…これって、先生が戻ってくる一時間の間だったら、ここにいても大丈夫って事だよね…」


そんな先生の発言と行動は、なんだかこっちの事情が分かってるみたいに思えた。何だろう。あたし達を見てそんなすぐに分かってしまうものなのか。大人ってすごい…というか、先生ってすごい。


「気を遣ってくれたんだね先生…って、レナちゃんはベッドで休みなね、あたしは…あたしは、どうしようかな」


本当は、先生の促す通りにここに残って話がしたかった。二人だけの絶好の機会…なんて言ったらアレだけど、でも本当に状況的にはそうだし、だからわざわざ先生も出てってくれた訳だし。…だけど、


「レナちゃんも困ってるよね、急にあたしに変な事言われて…突然だよね、朝一から教室であんなの…嫌だったよね、ごめんね。だから、その…うん。ゆっくり休んでね、ほんと。あたしは戻っとくからさ」

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