優しくないっ、優しさを感じない!


「…あたしね、レナちゃんに嫉妬してたんだ」


あたしがそれを口にすると、レナちゃんはハッと息を飲んだようだった。その反応はレナちゃんには身に覚えがあると、そういう事なのかなと思うと自分自身が情けなくて …つい自嘲的な笑みが張り付いてしまう。


「あたしの欲しかったもの全部持ってる、あたしの欲しいもの全部持って行っちゃう、そんな気がして…レナちゃんの良いところすごく一杯知ってるから、だからかな。変わっちゃうのはレナちゃんのせい、そんな風にまで思った自分が正直居たんだ。あたしの居場所を取られちゃう、なんて」

「……」


全部を話そうとは思ってるけど、でもコースケの気持ちまで話す訳にはいかない。そんな事してしまったらコースケの恋が台無しになってしまうから。そうなるとあたしには、具体的に名前を出して説明する事が出来なかった。

あたし達の関係性が変わってしまう事が怖かった。一人のけ者にされて、コースケとの今の関係が壊れちゃう事とか、レナちゃんとコースケと三人では無く、二人と一人という状況になってしまう事が嫌だった。大好きだったその人達から邪魔者扱いされるような、ずっと大事にしてきた想いも思い出も全部無くなってしまうような、そんな気持ちが“取れてしまう”、そこに繋がったんだと思う。


「でも、違った。それはあたしが一方的にあたしの想いを押し付けて、現実を見てなかっただけだった。ちゃんと向き合って、見つめてみたらね、あたしが求めてたものって何も変わってなかったんだ。あたしはちゃんとそこに居た。あたしは新しい形を見つけて、それが…一番良い在り方だって分かったの」

< 207 / 310 >

この作品をシェア

pagetop