優しくないっ、優しさを感じない!
なんて、控えめに、様子を窺うように言うレナちゃん。だからあたしは「なんで?」と笑顔のまま尋ねてみる。…すると、
「…だって、良い人過ぎるよヒロちゃん。だから…」
…そして呟いた、彼女の気持ち。
「だから中村君の事許せないのに…嫌いになれない。…ヒロちゃんに、似てるから」
悔しそうにそう言いながら、ぷいっとそっぽを向いたレナちゃん。そんな彼女に…あたしは、再度笑ってしまった。
「…笑い過ぎだよ、ヒロちゃん」
「いやぁだって、嬉しくて…っ」
「嬉しい?」
「うん。だって初めてだからさ、レナちゃんのそんな顔見るの。これもコースケのお手柄だね」
「……」
「ははっ、そんな嫌な顔しないでさ!きっとコースケ諦めないよ。きっとそう」
「……」
“なんで分かるの?”口に出さなくても分かる、そんな表情であたしを見るレナちゃんがそこに居る。だから言ってあげた。教えてあげた。
「だって…あたしと似てるんでしょ?コースケは」
ーーそれがきっと、鍵だと思った。それはきっと、レナちゃんの心を開く鍵。レナちゃんの中の大きな意味。影響力。それをあたしは分かってた。本当は…分かってたんだと、思う。でもきっと、それはまだ本人も気づいてない小さな形。
あたしの言葉にレナちゃんは目を丸くした後、すごく困った顔をしてたけど…結局最後には、仕方なさそうに笑ってくれた。
そこになんだか明るい未来が見えた、あたしにはそんな気がした。