優しくないっ、優しさを感じない!
耳元で発せられた声は、まるで直接身体の中に送り込まれたような、そんな感覚がした。ブルリと身体が反応する。鳥肌が立つ。
「コースケコースケ、もうウンザリだ」
最後に告げられたその声色は、その言葉の意味合いとは正反対に、ヤケに穏やかで静かなものだった。そしてそれに疑問を抱く合間もなくーー進藤は、あたしから身を離した。
最後に一瞬見えた進藤の表情。それは悲しんでるようにも、怒ってるようにも見えなかった。でも、声と同じような穏やかなものでも無いとハッキリ言える。
それはまるでただ淡々と何かをこなすような、感情を見せない凍りついた表情ーーそんな風に、あたしには見えた。
そんな進藤を見て、知ってしまったら、もうこれ以上声なんてあたしにはかけられない。
…分からない。
なんでちゃんと言ってくれないんだろう。何をそんなに隠してるんだろう。なんでそんなに隠したいんだろう。それなのに…なんで、こうやってわざと少しだけ欠片を残すんだろう。
進藤の思惑が見えない。
進藤が求めてるものが、あたしにはさっぱり分からない。