優しくないっ、優しさを感じない!
あたしは甘えていたのだろうか。その環境に身を置いていて気づいていなかったあたしの幸せ。もう手遅れになってしまった。こんな事にならないように努力するべきだった。あたしはもう持ってない。置いてきてしまった、とても大事なものだったのに。だからあたしは幸せになれない、そんな自分に戻れない。
…でも、そんなあたしが置いてきたもの、それって一体…それってきっと…
「ヒロちゃんにとってタケル君は、そんなに大切になってたんだね」
かけられた言葉に、あたしは顔を上げた。それでようやく気がついた。あたしが俯いていた事に。レナちゃんに全部話していた事に。
「あ…れ、レナちゃん、えっと…」
「分かるよ、その気持ち」
「…え?」
「大切なものが無くなっちゃったって分かった時の気持ち、分かるよ」
そして、「それで後悔する気持ちも…」そう呟くレナちゃんは、ニッコリ笑っていた。笑っていたけど…あたしにはそれが、なんだかすごく、すごく辛そうに見えた。
「レナちゃん…」
「でもヒロちゃん、ヒロちゃんはまだ無くしてないよ。無くなってなんかない」
「…え、そ、そんな事…」
「タケル君がヒロちゃんの事嫌いになるなんてあり得ない。それは絶対だよ」