優しくないっ、優しさを感じない!


そう言い切ったのは、あたしをジッと見つめるレナちゃん。その瞳には今までに見た事の無いくらいに濃い、力強く自信に満ち溢れたそんな色を宿していて…


「…ぜっ、たい…?」


その言葉には正にピッタリな、そんな光があたしからも見て取れた。

だから思わず頷きそうになって、でも違うよちょっと待ってと引き止めるあたしが居て、その声でハッと我に返って…


「で、でも違ったんだよ、今までと違って、すごく、すごく冷たくて…怖い、目であたしを見て…」

「きっと何か理由があるはずだよ。タケル君がそんな事するはずがないよ」

「…いや、レナちゃんとか他の子ならまだしも、あたしだもん…あたしにだと思ったら余計に真実味が増すっていうか、それこそ当たり前な気がしてくる…、」

「違うよ、ヒロちゃんだからだよ。ヒロちゃんにだから、だよ」

「……え…あたし…?」


そんな馬鹿なと、あたしはレナちゃんに疑いの眼差し…というかむしろ、そんな慰めはいらないんだよ分かってるんだよ、くらいの気持ちを視線で送った。するとレナちゃんは「あーもう!」と、彼女らしからぬ荒げた声を上げる。


「なんでそんな風に思わせる事しか出来ないんだろう!あの人はいつもそう!」

「え、あ、あの人?」

「タケル君だよ!昔からタケル君は違う事しかしない!臆病で卑怯者!」

「え…え?え⁇ 」

< 252 / 310 >

この作品をシェア

pagetop