優しくないっ、優しさを感じない!


な、なんだ?どうした⁈ と、怒りを露わにし始めるレナちゃんのまさかの進藤をなじる言葉に、あたしがテンパり始めたその時だった。ちょうどその時、廊下の方から声が聞こえてきた。


「っ!……」


聞き覚えのあるその声に、あたしは思わず身を固める。ゾッとする。またあの寒気がやってくる。また思い出されるあの時の表情に絶望感。彼に嫌われるという事。嫌われたという事。きっとこの声を聞く度に、奴の姿を見る度に、あたしはもうこれからずっと、そんな思いをするはめになるのかもしれない。

そんなの、嫌だ。嫌なのに、それなのに…


あたしは、答えの見出せない世界へと引き込まれていく。…すると、そんなあたしの様子を見たからなのか、それとも始めからそのつもりだったのか。あたしの隣でレナちゃんはスッと席を立った。


「…行ってくる」


すると何やら決心したような力強さでそう呟いて、廊下の方へと足を進め始める…って、


「ちょ、ちょっとレナちゃん!どこ行くの⁈ 」


あまりにも突拍子もない彼女の行動に、あたしは慌てて静止をかけた。多分これは廊下に出る気だ。進藤の所へ向かう気だ!こんな敵意満々で向かう先なんて、今の流れからしてそこしかない!

するとレナちゃんは、どうやらあたしが止めたのが気に入らなかったんだろう。何をするんだと文句でいっぱいの視線をあたしに向けて…って、それはレナちゃんあたしのセリフ!

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