優しくないっ、優しさを感じない!


そこには、言葉にならない想いがあった。


ボッと身体を熱くさせるような、そんな想いが湧き上がってくる。その想いはもしかしたら、進藤のあの瞳と、声と、同じ物なのかもしれない。

だって、熱い。胸が熱い。

それなのに、それはどこか清々しく爽やかで。きっと熱いそれを全てさらけ出してしまったら、その清々しさに包まれる事が出来る。

言ってしまったら楽になれる。


「…あ、あたし…」


“進藤の事が好き”それが一番望んだ形。

あたしが今求めているのはそれ。進藤もそうだったなんて知らなかった。嬉しい、進藤がそう思ってくれていたなんて。進藤もあたしと同じであたしの事を、進藤がーー


あたしの事を、好き?



「……嘘だ」

「…え?」

「そんなの…嘘だよ、信じられない」


ーー嬉しい想いとは裏腹に、あたしの口から出たのはそんな言葉。


「進藤があたしの事好きなんて、そんなの信じられない!」


そう言って、あたしはその場を走り去った。

後ろの方からあたしの名前を呼ぶ進藤の声が聞こえたけど、それを振り切るようにあたしはとにかく走って逃げた。


怖かった。


その瞬間抱いたのは、そんな感情。


進藤があたしを好きだなんて、そんな事が本当にあり得るのだろうか。


頭の片隅で冷静になったあたしが今までの出来事全てを思い返した瞬間、答えは見つかる。


違う。きっとそんな事ない。


あり得ない。


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