優しくないっ、優しさを感じない!


信じられない!と言い捨てて、走り去ったあの日から土日を挟んで約一週間目の今日。あの日を境に進藤からの着信がやたらと来るようになった。…まぁやたらにというか、1日1回ずつというか。それでも今までの事を思えばやたらにと言いたくなってしまうのはしょうがないと思う。

そりゃあもうなんか、驚いてる。驚いてるけど、仕方ないよなとも思う。だって話の途中で逃げてきてしまったのだ。まだ終わらせてないそれを進めたくて、だから進藤はガラにもなく毎日かけてくるんだろう。毎日1回、きっちり夜寝る前の11時頃。

でも…それが分かっていても、悪いのが完全にあたしだって分かってても、あたしはそれを毎回無視してしまう。電話には出ない。出れない。だって色々怖い。気持ちが固まってないっていうか、意味分かんないっていうか、信じられないっていうか、まだ受け止められないっていうか、絶対違うっていうか、勘違いにも程があるっていうか、本当は騙されてんじゃないか…って、いうか。

そのせいで最近少し寝不足だ。寝る前なんかにかけてこないで欲しい。悩んで悩んで寝れなくなってしまう。


…で、だ。


あたしが出ないと分かったら、奴は次のパターンに出た。


電話に出ないしなるべく会わないようにしてきたあたしとどうしてもケリをつけたいらしい進藤は、着信をシカトし続けた4日目以降、ついには最終手段を投入してきた。


「でもあのタケル君がなぁ。ヒロちゃん、これはすごい事だよ」

「……」

「毎日教室まで会いに来るなんてあり得ないよ。これはもう本気だよ」

「……」


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