優しくないっ、優しさを感じない!
「騙されたって何?俺がおまえに優しく無かったら騙した事になる訳?」
そう言って、言葉と共にジロリと奴はあたしを睨みつけた。その目力に悔しくも一瞬怯んでしまったりした訳だけど…でも負けてたまるかと、あたしは自分を奮い立たせる。
「そ、そうだよ!爽やかで優しげで良い人そうだったじゃん!」
「それは勝手におまえが感じただけだろ?俺はただ親切にしただけだ」
「いや、親切って優しくする事じゃん!」
「優しさを持たなくても親切には出来るんだよ」
「は?優しいから親切に出来るんでしょ」
「…だからおまえはバカだって言ってんの」
そう言ってまた、奴は溜息をつく。それはまるでさっきと同じ…おい、あたしは知ってるぞ。もう学んだぞ。それは呆れてるんだな?
「また、そうやって…!」
「まぁでも、別にそんな事分からなくても良い事か」
「…え?何で?」
「だってその方が幸せだろ、優しくして貰ってるって感じてた方が」
「え?まぁそりゃあそうでしょ。優しくされた方が……って、またあたしの事バカにしてる?」
…なんだかもう、逆に感心すらしてきた。