優しくないっ、優しさを感じない!
え?と声の方へと振り返ると、そこには走って来たのであろう、肩で息をするコースケの姿が。
「え、こ、コースケ⁈ 何、どうしたの⁈ 」
「いや、昨日の事っ…謝ろうとっ…思って…はぁー疲れた!」
「えぇ?いや、もうそれは良いって言ったのに、」
「ヒロちゃん」
するとひっそりと耳元で声がした。レナちゃんだ。
「先に行ってるね」
小さな声であたしに告げたレナちゃんとはたりと目が合うと、レナちゃんは嬉しそうに微笑んでくれた。あたしにはそれが良かったねと、言ってくれてるように見えて…うん。きっとそう思ってくれていたに違いない。
「ありがとうレナちゃん」
感謝の思いを言葉にする。するとレナちゃんは、「じゃあね」と素敵な笑顔を残して塾へ向かっていった。まるで天使のような子だと、笑顔に仕留められたあたしはその後ろ姿を見ながら思う。
「ん?何、友達?大丈夫だったか?」
「あ、うん。大丈夫大丈夫」
多分下駄箱の列が邪魔して、レナちゃんの姿は見えなかったんだと思う。コースケはひょっこり顔を出したけど、その時にはもうレナちゃんは出ていってしまった後だった。