優しくないっ、優しさを感じない!
始めこそ何が起きてるのか分からなかったとはいえど、結果的にほとんど立ち聞きしてしまった訳だ、女の子の一世一代の告白を!そんなの知られたらヤバイし、知っても向こうもきっと嫌だろう!
どうしよう!と、慌てて辺りを見回す中、そこであたしは校舎の壁に扉があるのを発見した。それはまだ一度も使った事の無い扉だったけど、でも今のあたしは悩む暇も無く、反射的に中に飛び込んで扉を閉める。
するとそこは、どうやら掃除用具入れだったらしい。入って来たあたしの周りには箒やら塵取りやらの、外回り用の掃除用具なんかが整理されて置かれていて…うん、これなら入っても誰に怒られる事も無いだろう。よしオッケー!と、確認出来た瞬間思わず安堵の溜息がこぼれた。
いやぁ、それにしても開いて良かった。開かなかったら完全に終わってたよほんと。
まだドキドキしている心臓を抑えて一息尽いたあたしは、なんだか得意げだった。まぁ安全だとしても、居なくなったらすぐに出よう。こんな埃っぽい所に長居は無用ってやつだね!
そしてあたしは、いそいそと扉に耳を当てて、外の様子を窺ってみる。
『ーーー、ーー』
まだ少しだけ話し声が聞こえる。
早く、早くと心で念じながらも今までの人生にないくらい聞き耳を立てた。そして前を通って行ったような足音にしっかりと意識を集中させて、それが聞こえなくなるまでジッと我慢してーー
「よっし!行ったー!」
バンっと、開放感から思いっきり扉を開けて、外へと飛び出した。そしてあたしもなかなかやるな〜なんて、妙に誇らしげに後ろ手で扉を閉めると…
「…は?」
「…え?」