優しくないっ、優しさを感じない!
…何故か、まだ居た約一名。
「…なんで?」
「いや、こっちの台詞だから」
それはさっきまでの声色とは明らかに違う、愛想ゼロモードの奴の姿。正しくそれはあたしの予想していた通りの人物…進藤 タケルが、驚いた顔をしてそこに佇んでいたのだ。
え?…え?
なんで?どうして?と、その一瞬であたしの脳は思考モードへ突入する。
だってもう声もしなかったし、足音までちゃんと聞いたし、絶対バレないように細心の注意をだね、しっかり払ったはずなのに、それなのになんでまだここにコイツが……可笑しい、何かが可笑しい。あれ?そういえばコイツ一人?じゃあやっぱり女の子は行ったって事だから……あぁ、そっか!
「足音を二つ聞かなきゃなんなかったんだ!」
「どういう事だよ」
「…は!」
…あたしは、すぐに後悔した。
何故今そんな事を口にしたのかと。
珍しくちゃんと正解に辿り着いたのに…それなのに、もう諦めるしか無いじゃないかと。
…いや、まだいける!
「あ、いや〜、なんか掃除用具片付けようとしたらさ〜何か話してたみたいだから邪魔しちゃ悪いかなと…」