優しくないっ、優しさを感じない!


………


………は?



「なっ、ち、違っ、」

「でも悪いけど俺は、おまえに優しくしてやらないよ」

「うっ……え?」

「優しくして意味のある奴と無い奴って
いるんだよ。その後者がおまえ」

「………は?」


それって…どういう事?


疑問は、自然と頭の中で生まれた。

でもあたしはまだそれを口にする前に処理している段階で、あたしのそれが終わるのも待たずに奴は再度口を開く。


「俺は意味のある人間には優しくする。優しくして見返りがある人間には、俺だって優しくしたいと思うからね」


堂々とーー奴は当たり前の事を口にするかのように、あたしに告げた。

それは正に、奴の行動の根っこの部分に対するあたしにとっての激白だった。それにあたしは思わず…言葉を失う。

もちろん、あたしが優しくしてもらえない事を知ってショックを受けた…とか、そういうなんだか可愛らしいような理由では無い。


…優しくして意味のある奴と無い奴?


あたしにとってそれは、初めて聞いた線引きだった。


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