優しくないっ、優しさを感じない!


……前言撤回。

やっぱりコイツは、優しさなんてもの根っこから持ち合わせていない。


「最低だ!あんたなんて最低だ!」


あたしは、一歩前に足を踏み出しながら思いっきり奴を指さして言ってやった。

もう失礼だとかそうゆーのコイツにはいらないものだって分かった。だからもう心の底から言ってやる!あんたは最低だって思ってやる!っていう気迫を込めてあたしは奴に向かっていった…はずなのに、それなのに!


「そう?」


なんて、指をさされて心の底から言われてるはずの本人はどこ吹く風。まるであたしから嫌われてもなんでも無い、あたしなんてどうでもいい、ノーダメージだと言わんばかりに…わざとか?わざとなのか?ほんとにコイツって奴は…、


「でも俺はおまえの事、そういう枠からはみ出た存在だと思ってるけどね」

「嫌な奴っ……って、はい?」


え、何?枠からはみ出る?


そんな言葉に漂うのは、またもやバカにされたような気配。


「…つまり何?」


ジロリと睨みながら、あたしは問い質した。でも結局奴がそれに答える事もなく…ニッコリと微笑んだ奴はその後、何事も無かったかのようにスタスタと歩き出す。


「あ、ちょっと!」


慌ててその後ろ姿に声をかけるも、奴は完全無視。あたしなんて完全シカトで颯爽と歩いて行く…何なんだほんと、意味わかんない!ほんとムカつく!ムカつく‼︎


そしてやたらとイライラを募らせたあたしが落ち着かせながら駅へ向かうと、結局また駅で鉢合わせしてしまったりして…そんな気分はおさまりを見せる事のまま、あたしは貴重な一日を終える事になってしまったのだった。



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