優しくないっ、優しさを感じない!


履き替えていた靴からあたしは目を上げる。進藤じゃん、と言ったのは間違いなくコースケ。そして目をやったコースケは今…あたしを見てはいなかった。

…嫌な予感がする。


恐る恐る視線を動かした。その先はコースケと同じ所を目指す。昇降口の入り口…あたし達が居る下駄箱に向かって来る形で…ゆっくりと、歩いてくる…


「…あぁ、おはよう中村」


あぁやっぱり…やっぱりコイツだ。


「あと…神崎サンも、おはよう」

「……おはよう」


ーー奴と、目があった。

奴はニッコリと笑った。そしてあたしの横をそのまますっと通り過ぎていく…


「進藤!」

「…何?」

「………何でも無い」


思わず呼び止めたのはあたし。でも、なんで呼び止めたんだろう、なんてぼんやりと頭の中で思う。


モヤモヤ、イライラした。それはまぁ、昨日からずっと、今日の朝も続いてるものな訳だけど…でも。それだけど。

神崎さん?おはよう?…笑顔で?

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