優しくないっ、優しさを感じない!
あれだけ裏表がある奴だ。しかも優しくする人としない人を選んでるときた。他にも優しくされない人、あたしみたいな人が絶対居るはずなのだ。だって皆が皆アイツの事好きな訳じゃないし、アイツだって皆の事好きだとかあり得ないし…
『それは勝手におまえが感じただけだろ?俺は親切にしただけだ』
「……親切…」
そうだ、騙されたって騒いだ時、奴は親切にしただけだって言ったんだった。
優しくはしてない、親切にしただけ…
「…レナちゃん、優しさと親切の違いって何か分かる?」
「……」
あたしが問いかけると、レナちゃんは驚いた顔をした…ように見えた。いや、実際は驚いたんだと思う。そんな表情を見せたんだと思う。でも…その表情はすぐに変わったんだ。
「…私もよく分からないんだけどね?だけど…」
そう言うと、レナちゃんはニッコリと笑った。
「結局、そこに違いは無いんだよ。ただ自分にそうやって、言い訳してるだけで」
ーーその笑顔は、とても嬉しそうに見えた。嬉しそうに、あたしをジッと見てレナちゃんは微笑んでいた。…だから、
「…え?言い訳?」
「あ、ううん、何でも無いの。ヒロちゃん、これからもよろしくね」
「えぇ?あ、も、もちろんだよ!」
…なんて、なんだか重要な部分が頭に入って来なかった気もする。
そして、隣のニコニコしたレナちゃんよりも早くに最寄り駅に着いてしまうあたし。
なんだかまだ分からないままだったけど…レナちゃんが嬉しそうだったからまぁいいかと、勝手に決着をつけることにした…というか、決着をつけるしかなかった。