優しくないっ、優しさを感じない!
思いもしない言葉を前に、あたしは自然と首を傾げていた。声が耳に入った瞬間、あたしの周りから外の音が聞こえなくなる。しんとした教室内にはたった二人、あたしと進藤。そして今あたしの視界には、真っ直ぐに奴が映っている。
「おまえは…中村の事が、本当に好きなんだな」
「……うん」
思わぬ展開に戸惑いを隠しきれないあたしが小さく頷く。すると進藤は、「すごいと思う」と口にする。
「おまえみたいな奴、なかなか居ないよ。そういう人間にはなかなかなれない」
「……」
「ぶつかったら痛いのが分かってても避けて通る事が出来なくて、そこに真っ直ぐ突っ込んでいくタイプ。…まぁ、ぶつかられる側からしたら迷惑極まりない話だけど」
「……」
…あれ?もしかしてバカにされてる?なんて、奴に対しての真剣な気持ちが去り始めた、その時だ。
「…でも、それだけ真っ直ぐ来られたら嬉しいかもしれないね」
「……え?」
「それでたとえ、ぶっ壊されても」
…なんて、可笑しそうに、仕方なそうに笑って進藤は言った。
進藤がみせたその表情は、あたしが奴と関わるようになってから初めて見る表情だった。無邪気で、素直で、少し呆れてる、そんな柔らかな表情ーー
ーーだから、
「えっ、で、でも、突っ込んじゃうんだよ?穴あくよ?それはヤバイよ進藤、あたしにそこ全部やられちゃうんだよ?」