優しくないっ、優しさを感じない!


…予想だにしない、その言葉。

有りもしないその答えに、一瞬フリーズしたものの…なんとかあたしの機能は復活を遂げる。


「…あっ、い、いや〜そういう訳じゃあ…」

「なーんだそうか!で、進藤に相談してたんだな?だから仲良くなったのか!」

「えぇ?いや、それとこれとはその、なんてゆーか、」

「そっかそっか、そうだったのか!そっか…そうだよなぁ、それは本当に…」

「いやっ、いやその、ち、ちがっ、」

「うん、良かった。良かったな、本当」

「っ、……」


ーーその瞬間、あたしは、最後の一文字を飲み込んだ。


ちが“う”んだと、言いたかった。

だから否定しようとして泳いでいた視線をコースケに合わせた、そのつもりだった。


絶対そんな事無いんだって、だってあたしが好きなのは、一番好きで忘れられないのは、今もずーっと好きなのは、ここに居る君なんだからって、だから他に好きな人が出来る訳ないんだって…心の中では、必死に訴えてた。


…でも結局、それを口に出す事は無かった。あたしには言うことが出来なかった。


だってコースケが…すっごい優しい顔であたしの事見てたから。こんな表情、初めてだったから。だから…分かったんだ。


あぁやっぱり。コースケにとってあたしは、気の合う友達でしかないんだ。

あたしに好きな人が出来ても、微笑ましく思えるくらいの。あたしの身になって嬉しく、思えるくらいの。



「え、えーとそうだ!職員室だよね?急いでるよね?ごめんね付き合わせたよね!」

「え?あ、別に、」

「あたし教室行かなきゃだしさ、上行くから!じゃあまたね!部活頑張って!」


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