優しくないっ、優しさを感じない!
それからは無言の時が続いた。あたしが話さない分、進藤も話し出さない。だから不思議で無意味で無駄な時間があたし達の間で随分と過ぎ去っていって…
「…何かあったの?」
「し、進藤恋愛マスタ〜!」
この時間に耐えられなくなったのであろう進藤が口を開いたのをきっかけに、あたしの口からはようやく言葉が飛び出した。
それは今まで出て来られなかった反動からかすごく勢いよく、今のあたしを占める想いを感情のままに簡単な言葉に乗せて、奴へと真っ直ぐ向けられる。
多分、きっと受け取ってくれる、声を掛けてくれた事でそう信じたあたしが居たからだと思う。
「うわーん!あたしってバカだーーっ‼︎ 」
「…何を今更」
…それなのに。そんなあたしに奴は…こんなにも頼りにしてるあたしに対して奴は…まるで、その奥に極寒の地でも広がっているのでは無いだろうかと思わせる程に冷め切った目を向け、ホッキョクグマでも身を凍らせるのではとも思える程の冷ややかな声色のセリフを、なんの躊躇も無く発したのだ。
まるで氷、氷の塊だ。でもこれが奴の通常運行だ…悲しい事に、今のところあたしに対してのみだろうと思われる。
「冷たい!冷た過ぎる!こんなにあたしが困ってるのに!」
「困ってたの?」
「困ってんじゃん!悩んでんじゃん!だから進藤に言ってんじゃん!何かあったのって聞いたじゃん!」
「だから話聞いてんでしょうが。つーか何?思ったより元気だな」
「元気じゃないよ!もう終わりだよ、倒れそうだよ!」
「倒れるのだけはやめてくれな。迷惑」
「!、冷たい…っ!」