優しくないっ、優しさを感じない!
「喜んでた。あたしに好きな人が出来たって分かってコースケは喜んでたんだ。喜んで貰えるくらい…あたし達は、友達だったんだ」
それはきっと、とても親しい、仲の良い、気の合う友達。そんな捉え方。そんな間柄。
「そんなの中学の頃から何にも変わって無い。あたしは全然進めて無い。無意味って無駄って事だ。あたしのやってる事も思ってる事も全部無駄だ!」
「…じゃあ、やめれば?」
ーーそれは、サラリと。当たり前の事のように提示された。
でも進藤からのその言葉は、真っ直ぐに何の迷いもなく、鋭く突き付けられたーーそんな感覚が、あたしにはして。
「……」
…どういうつもりで言ったんだろう、なんて。
そこに潜む思惑なんて、あたしには分からない。むしろ奴の事だ、本当に素直に思った事を口にしただけなのかもしれない。でも…やめれば、なんていう、そんな言葉で怯む、あたしじゃない。
グッとあたしは、進藤を睨みつけた。
「でも、否定するのはもっと辛い!」
それは現実に刃向かう様に、思わず飛び出した言葉。
否定するのはもっと辛いーー自分の想いを無いものにするのは、今の状況よりももっと辛い。
分かってるんだ。あたしの気持ちはあたしが一番。だからあたしは走ってる間中ずっと呟いてた、これで良かったんだと。何もしないで良かったんだと、逃げて来て良かったんだと自分を慰めてたんだ。
「迷惑かけたくない気持ちも本当。でも結局、好きな気持ちを否定したくないからあたしは逃げた!現実と向き合うのが辛くて、嘘でも認めたく無くて…だってそれを認めたらあたしはコースケを好きだって気持ちを否定するしかない!だけど訂正したってそれは一緒で、結局あたしには否定する道しか無くて…だから逃げたんだ、何もしなかった。だってそんな事したらもう、ここで終わりになっちゃう。そんなのまだ嫌で…そんなの無理で…だってあたしは…あたしは、ずっと真っ直ぐ想ってたい」