優しくないっ、優しさを感じない!
好きな人が出来たって認めたら、迷惑掛けないためにコースケじゃないよって言うしか無い。
違うよ、好きな人出来てないよ。なんて訂正したら、それこそあたしは正面からコースケへの気持ちを否定する事になる。
そんなの嫌だ。あたしはまだ好きな気持ちを否定したくない。もしこの先ずっと結果は同じだとしても…どれだけ無駄でも、それでもまだ、あたしは想っていたいんだ。だってあたしだけが持ってる気持ち。温かくて切なくて、キラキラして重たくて…
「こんなの、簡単に捨てられないよ」
そうだよ、大事なんだから捨てられない。コースケが好きだっていうこの気持ち。こんなに素敵なもの、どうやったら捨てられるっていうんだ。
「だからあたしは、認めも訂正もしないんだ。それで間違ってない。その辛さの方が…言えない心苦しさの方が、何倍もマシだもん。無駄な片想いの方が。だからあたしはこれで良かったんだ。…そう、これで良かったんだね」
「……」
ーーそれからまた、暫しの沈黙が続いた。
あたしは結局逃げた。好きな人がコースケだなんて言って迷惑かける訳にもいかないし、だからって他に好きな人が出来たなんていう嘘はつけなくて、勘違いしてる事に対しての訂正も出来なくて、でもこんな気持ちを捨てる事も出来なくて。だからその決断をしなきゃいけない状況からあたしは逃げた。だから何もしないで想い続けられる道を選んだ。
それはすごく卑怯な“逃げる”以外の何ものでもない。それをあたしは認めたくは無かったけど…でもなんだか、今になって急にごちゃごちゃしてた状況がハッキリしたというか、全て吐き出してスッキリしたというか、口に出したら丸く収まったように思えた。ちゃんと解決したような。
そしたら今度は気持ちの良い脱力感がやってきて…沈黙の間、あたしはそれに身を任せていた。
…進藤は、どう思ったんだろう。あたしの話を聞いて進藤は今、何を考えているんだろう。
「…進藤?」
「ん?」
「あの…何か言ってよ」
「……」
「進藤さん?」
「……とりあえず……何があったのか、よく分かってないんだけど」