優しくないっ、優しさを感じない!


「……はい?」


分かって…ないだと?


こんなに熱弁したのに?と、怒りを混じえた視線を進藤に向けると、奴はキョトンとした顔で首を傾げている…うん。なんだかやけに素直な態度だ。どうやら本気で分かっていないらしい。

そんな奴の様子にあたしは今一度、やり取り(というかあたしの一方的な演説)を思い返してみる事にする。

…そして、気が付いた。


「…あぁ!あたし、まだ何があったかちゃんと言ってなかったのか!」

「……」

「あちゃーごめんごめん。そりゃあ分かんないよね、てか何の話だよってね、アレだけ盛り上がっといて。あ、でも進藤途中で口挟んでなかったっけ?」

「……」

「ん?あ、流れ的にみたいな感じ?あーまぁそうだよねー、そうなるよねー。じゃあえっと、実はここ来る時なんだけどー…」


こりゃ失礼しましたと、あたしは先程我が身に起こった恐怖体験にも近いそれを説明し始める。

まぁつまりまとめると、あたしに他に好きな人が出来たって誤解されて、そしたら喜ばれた。それだけの話なんだけど、それでもあたしは事細かにそこにいくまでの経緯を丁寧に説明したと思う。もちろん、ちゃんと進藤恋愛マスターのくだりも入れた後、今に至ると、そこまでしっかり説明出来たと思う。


「……」

「……し、進藤?」

「……」

「進藤さん?」

「…おまえって、本当にバカだな」

「だっ、だから始めに言ったじゃん!あたしバカだって!」

「つーか話に入るまでの変な独り言が多過ぎる」

「え、そう?そうだった?」

「増して残念だね、おまえ。ていうか何?おまえのミスに俺を巻き込まないで欲しい。俺に相談って何だよ、オススメしといたからって何だよ」

「い、いやそれはさー、進藤は恋愛面では間違ってないってゆーか、結構相談のってくれたから、なんかそう思ったら誰かにオススメしようかなと…そしたらちょうどそんなタイミングに…」

「そんなつもりは無いし、迷惑極まりない」

「うっ…ご、ごめんなさい」


…なんて謝りながらも、「でも今だって結局話聞いてくれてるしさー…」なんて、どうも納得がいかないあたしがブツクサと不貞腐れて呟くと…進藤は、大きな溜息をついた。


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