優しくないっ、優しさを感じない!
「そうだヒロちゃん。折角の夏休みだし中村君とは遊びに行かないの?」
「え?…あ、コースケ?」
ギクリ
…と、ついなんか反応する。てゆーかしちゃう。するとレナちゃんはやっぱり流石で、すぐにそれを感じ取ったみたいだった。
「え、ヒロちゃん?」
どうしたの?と、らしくないあたしの反応に首を傾げている。うーん、それもそうか。あたしだってらしくないなと思うもんな。あれだけコースケの名前を聞く度に浮かれていた心が、今は毎度のごとく沈んでいる。沈みに沈み切っている。
あの事件の後からあたしは、コースケ関連のことがあるとどうしても思い出すのはあの時のやり取りで、あれで良かったんだと分かってはいてもその度あたしは撃沈していた。どうせあたしなんて…なんて、らしくない卑屈な気持ちがどうしても顔を出すのだ。
あの時の衝撃はおさまった。確かにおさまったんだけど…それによって生まれた傷は、まだあたしの中でグズグズと残っている。
だからあれからなんだかコースケとも顔が合わせづらくて、話してもなんか盛り上がらなかったりして、だからついそっと避けてみたりしちゃったりして…なんて、今更感満載のこの行動。自分でも呆れる。完全に状況は最悪だ。
「…そうだ。ねぇヒロちゃん」
「……ん?」
「今日ね、塾がお休みなの」
「あ、そうなんだ。じゃあ一緒に帰れるね」
「うん。だから今日少し寄って行かない?」
「?、いいよ。どこに?」