マルカポーネの心配事
そう
俺はしょせん犬。
ボールに夢中で、男が部屋に入って来たのも気付かなかった。
「散らかしていてゴメンなさい」
必死に掃除しておいてよく言うわ。
目をハート型にして
由紀は男の黒のレザーっぽいジャケットを、うやうやしく受け取りハンガーにかける。
「けっこう広いじゃん」
男はそう言い
白いラグの上に座って「灰皿ってある?」神経質そうにそう言った。
えっらそーに。
茶髪で長めの髪。
変なドラゴンのイラストTシャツ。
モンハンか?ひと狩りいっちゃう?
黒のパンツにジャラジャラチェーン。
首にはクロムハーツのネックレス。
ラルクのHydeに憧れてる中学生かよ。
けっ!
「犬じゃん」
バカっぽい顔と声が近寄り
男はゲージの中の俺を覗くから「うーっ」って唸ってやると「かわいくねー」って興味なさげにまた戻る。
テメーの方が可愛くねーわ。
「これオスだろ」
「うん。マルカポーネって言うの。カワイイでしょう」
「オスは嫌い。由紀がオスと生活してるだけで妬ける」
「やだ矢沢さんったら」
「だーかーらー、亮って呼べって言ってんだろ」
「……亮さん」
ダメだこりゃ。