マルカポーネの心配事
目をハートにして
うっとり顔の由紀を見るのも嫌で

俺は尻尾を丸め
プイと由紀から背中を向け
ガジガジとボールをかじる。

おもしろくねー。

それでも俺のキュートな耳は、会話を追いかけてしまう。

どうやら男は
雑誌のフリーの記者で、映画評論とか書いてるらしい。

だからゴダールか?
テメー本当に記事書いてんのか?

その話の内容は
ネットで拾ってきた知識を、コピペで脳内変換してる内容。
当たり障りのない
面白くねー話してんなオイ。
ダチの半蔵の方が詳しいわ。

「いわゆるロードムービーとしては駄作だね。あれなら俺だって撮れる」

「亮さんってスゴイね」

おぉスゲーヤツだろーな。
ゲスい週刊誌で風俗のおネーちゃんのパンツの色の記事書かせたら、右に出るヤツいないくらいスゲーだろーね。
いつもそんなん書いてんだろ。

「由紀は無知すぎるよなー」

ムチ打ったろかー。

「うん。ごめんね」

素直すぎるぜ由紀。
聞いていて痛いわ。

「知ったかぶりする女より、バカな女の方が可愛い」

ガサゴソと音がする
「あ、ダメ……」由紀の甘い声
テーブルが乱暴にどこかへ追いやられ、ラグの上に男と女が重なる雰囲気。

「亮さん、まだ早い」

「可愛いなお前」

R指定がラグの上で始まる。

由紀……お前、バカって言われたんだぞ。
聞こえなかったのか?
バカ<可愛いの式か?
カワイイの勝利か?

痛いわー由紀ちゃん。
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