マルカポーネの心配事

男はヤル事やったら「お前明日仕事だろ」って、帰ってしまった。

泊まられるよりいーけどよー
ヤッてすぐ帰るってアリか?
俺だってもっと優しいぞ。

由紀は男が帰ったら
ぼーっとした顔で俺に近寄り「ごめんねマルちゃん」って、乱れた髪を直しながらおれのゲージを開ける。

俺は尻尾を丸め
知らん顔で身動きひとつしなかった。

「ずっとゲージに閉じ込めてゴメンね。出てきていいよ」
優しい手が俺の背中を撫で
何だか泣きたくなった。

「もう寝ちゃったかな」
満たされた女の声。

心も身体も繋がって
自信に満ちた女の声。

「亮さんに……抱かれちゃった」
熱を持った女の声。

知ってるよ。
見たくなかったけど……ちょっと見た。

「私の事、可愛いって」

言うのはタダだしな。

「抱かれちゃった」

優しく撫でるなよ
俺、マジ泣けるよ。

あいつさぁ
そんなに優しくないじゃん。
初めて抱く女なら
もっと優しく抱いてもいいじゃん。

俺の由紀を乱暴に扱ったぞ。
あれは自分の欲求を吐き出しただけじゃん。

もっとさぁ

もっと優しく抱いてやれよ。

「くぅーん」
由紀とアイツのエッチを思い出し、切なく声を出すと「起こしたゴメン?」と笑ってる。

お前の笑った顔が好きなんだよ。
お前には幸せになってほしいんだよ。

あの男はダメだよ
そしてお前

また泣くよ……。
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