マルカポーネの心配事
「マルちゃん!」
心配性の由紀は、いつもの見慣れたじゃれあいでも常に気にする。

その敏感な性格
男にも応用できればいいのに。

「大丈夫だから」
ベテランおばさんに言われるけど

「だってうちのマルちゃんが一番小さいんですよ」

由紀よ
男は大きさじゃないんだ
テクだ。

入れ替わり立ち代わり
トイプーの俺の前に
毛並みの良いヨークシャーテリアだのダックスなど、俺よりデカい女たちと遊んでいると……大きな影ができる。

「よー色男。調子こいてんじゃねーよ」
黒い顔を光らせ
首にジャラジャラとチェーンを巻いたボクサ―犬がやってきた。
嫌な笑いを浮かべ
後ろにボストンテリアと柴犬を引きつれていた。

見ない顔だな
新顔か?

俺の身体くらいの足を曲げ、からかうように俺の前に顔を出す。
女たちが一歩下がり
周りの目線が俺達に注目する。

「モテモテじゃん」
軽く俺の頭を前足で叩こうとするので、素早く避けると舌打ちされた。

成犬用ビーフ味ジャーキーの匂いがした。

「そんな小さいモノで満足させれんのかよ」
自分の言葉に爆笑し
後ろのボストンテリアも笑い出す。

「キャー。マルちゃんが襲われる!」
遠くで由紀が叫ぶと

「うちのしまじろうが手を出したらすぐお仕置きしますから」
坊主頭でボクサー犬と同じチェーンを付けた男が由紀にストップをかけていた。

しまじろうってーのか
ウケる。
プッと笑うと
しまじろうの黒い顔が引きつった。
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