マルカポーネの心配事
「マルちゃん!」
心配そうな由紀の声に反応し、ダチのチワワはしっぽを振って、仲良さげに俺にじゃれつく。

由紀は今度はいつものチワワと仲良く遊んでるようと見て、あきらめたように近くのベンチに腰をかけた。

「犯すなよ」
背中に回ったチワワに言うと

「俺はノンケ」
笑って答える。

ここで一番気の合うダチである。

二匹並んでじゃれあいながら、小高い場所に移動して春の風を感じた。白いチワワは豹柄の服の内ポケットに歯を立て、ジャーキーを二つ足元に飛ばす。

「さんきゅ」
軽く言い
こっそり味わい目を閉じる。

「今日の豹柄もいいじゃん」

「うっせー。俺の趣味じゃねーよ。オカンの趣味」

MAN WITH A MISSIONのサードアルバムの話、【ゼロ・クラビティ】のレンタルリリースの話。新しいドックフードの話。犬用ガムがおえっとくる話。ソフトバンクの犬の話……などなど笑って話してから

「最近どーよ」
チワワが俺に言うので

「ふつー」って答える。

「お前んとこの由紀ちゃん。男関係おさまった?お前が平然としてんなら、今は男はいないとか?」

鋭いなチワワ
だてにあちこちで
吠えて噛んでるわけじゃない。

俺がツヤツヤな鼻で笑うと、チワワも笑う。
犬歯がセクシー。

「今は平和」
男なんてコリゴリだ。
由紀は今のまま
変な男に引っ掛からず
平和に過ごしてほしい。

最高に大好きだから
最高に幸せになってほしい。

誰も幸せにしなかったら
俺が幸せにしてやるぜ。

ダチのチワワと目配せをし
俺は遠くを見つめる。

穏やかな春の陽

「おっ半蔵じゃね?」

「シュークリーム付いてる?」

そんな会話をしながら

俺はこのまま
由紀がこのまま男に引っ掛からず

静かに暮らしてほしいと思っていたの


だが。




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