これが、あたしの彼氏です。【完】
「…………」
近くに置いてあった携帯を手に取り着信先を確認すると、あたしは一瞬頬をピクリと引きつらせた。なぜなら。
『着信中 矢沢心』
携帯の画面には、ハッキリとそれだけ表示されてあったからだ。
あたしは仕方がないなんて思いながら、ピッと着信へ繋がるボタンを押してそのまま携帯を自分の耳に当てた。
「――――はい…」
「何だその声。夏バテで死んでんのか、お前は」
「はっ?」
いきなり電話越しから聞こえた、憎たらしい低い声。あたしはそんな矢沢君の言葉に不満を抱きつつも「何か用ですか?」とそれだけ聞き返してやった。
「用がなかったら、一々電話しない」
「あ、そうですよね…」
「――――二日後」
「はい?」
「二日後、山本駅の近くで祭りがある」
「あ、祭り…うん、知ってるよ?」
「俺も気晴らしに行くから、お前も来い」
「…えっ!?や、やだよ…!」