これが、あたしの彼氏です。【完】
勢いでついOKしてしまったけれど、あんまり乗り気じゃない明後日の予定に一つ溜め息を吐いて、あたしはそっと目を閉じた。
「―――心ちゃん、心ちゃん」
「ん、」
「心ちゃん起きて。ずっと寝てたの?幾ら何でも熟睡しすぎよ」
「……あれ。お母さん…」
うっすらと目を覚ますと目の前にはお母さんが立っていた。ゆっくりと体を起き上げて、壁に掛かっている時計に目をやると丁度時計の針が見事に20時を差している。どうやら長時間爆睡していたらしい。
「夜ご飯、買って来たものだけど一緒に食べましょ」
「あ、うん」
眠い目をゴシゴシとこすりながら、あたしは一階へと繋がる階段をトボトボとした歩調で下って行った。
「そうだ心ちゃん、今年も山本駅のお祭り行くの?」
「ぶほっ」
お母さんが買って来た晩御飯のおかずを口に含んでいると急にそんな事を問い掛けられ、あたしはつい口に含んでいたものを喉に詰まらせてしまった。
「あら、そんなに驚かなくても良いじゃないの。あ、もしかして今年は男の子と行くの?まあー、心ちゃんもそういうお年頃になったのねぇ」
「ちょ、違うよ!何言ってんの!?そんなんじゃないから!」
「あら残念。じゃあ今年も由希ちゃんと?」
「そ、そうだよ。今年も由希とだよ」
「そう。じゃあ浴衣を用意しないとね」
「……えっ、」
浴衣という言葉につい拒否反応を起こしてしまう。浴衣を着て矢沢君と祭りに行くだなんて、実は物凄く楽しみにしていましたと捉えられても可笑しくないじゃないか。それだけは絶対に避けたいところである。