これが、あたしの彼氏です。【完】
けれど、「浴衣何処にしまったかしらー」なんて自分の事みたいに楽しそうに舞い上がっているお母さんにあたしは当然断れるわけもなく、祭り当日はお母さん仕立ての浴衣を着て行くこととなった。
その次の日、またしてもあたしの携帯が小さく鳴り、着信先を見るとそこには毎日部活で忙しいであろう由希の名前が表示されてあった。
「はい。もしもし」
「あ、心ー?」
「由希?急にどうしたの?」
「いや、明日の夏祭りさ、一緒に行けないかなあと思って」
「えっ!?祭り!?ちょ、だったらもっと早くに誘ってよ…!」
「え?何よ急に。ってことは、もうあたしより先に先約が居るってことね」
「……うん。矢沢君が…」
「あー、なるほど。それじゃあ仕方ないか。じゃああたしは秀斗先輩と一緒に行こうかなあ」
「うん。ごめんね。あたしも由希と行きたかった」
「まあまあ。そんな事言ったら矢沢君が可哀想よ。じゃあまた今度遊ぼう。夏祭りの日、会えたら手でも振って」
「うん。分かった」
そんな会話を交わしつつ、由希との電話は呆気なく終わってしまった。秀斗先輩と一緒に行くとか言っていたけれど、やっぱり由希も秀斗先輩に気があるんだ、なんてそんな事を思いながらあたしは明日矢沢君と一緒に行く夏祭りの事をグルグルと考え込んでいた。