これが、あたしの彼氏です。【完】
「ちょっ、これ以上はもういいよ…!ホントに!」
「あら駄目よー。浴衣なんて一年に一度着れるか着れないかのレア物なんだからー」
その次の日。あっと言う間に夏祭りの日はやって来て、あたしは一時間程前からずっとお母さんに浴衣と化粧を施されている。
城の生地に薄いピンクの桜が散りばめられた可愛い浴衣に、いつも下ろしている髪を頭上でアップにしたお団子ヘアに、ナチュラルメイクで施したふんわりとしたメイク。
「ほら出来た!髪も化粧もバッチリ!」
「………す、すごい」
「お母さんの腕をなめないでちょうだい」
お母さんの圧倒的な器用さに感心していると、お母さんは楽しそうに「ふふん」と鼻を鳴らした。そんなお母さんを見ていると、まあ今日くらいは良いかな…なんて気分に浸って来る。
「じゃ、じゃあ、行って来ます」
「はい。行ってらっしゃい」
元気よく笑うお母さんにトンっと背中を押され、あたしは玄関の扉をガチャリと開けた。