これが、あたしの彼氏です。【完】


「あ、金魚すくいやってる!」

「てめぇは脳内まで幼稚園児か」

「…な、何よ。矢沢君もやろうよ」

「俺は良い」

夏祭りに来るなり早速楽しんでいるあたしに矢沢君は可笑しそうに「ふ、」と笑った。
その後、小さい金魚を一匹ゲット出来ただけでかなりテンションが上がっているあたしに、いきなり矢沢君が後ろから「おい」と声を掛けて来た。


「…何?今金魚に集中して……」

「袖、濡れるぞ」

「えっ、あ…、」

不意にあたしの後ろにしゃがみ込んだかと思えば、あたしの浴衣の袖を後ろから持ち上げる矢沢君に、あたしは不覚にも少しドキッとしてしまった。―――どうしようもなく、距離が近い。

「……ご、ごめん。ありがと」

「あぁ。金魚の水で袖汚れたお前と一緒に歩きたくないからな」

「…う、そんなヘマしないもん」

そう言う矢沢君の毒舌はいつにもまして酷い。ピクリと顔が引きつりつつも、何故かこの近過ぎる距離感に落ち付けないでいた。
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