これが、あたしの彼氏です。【完】



その後、色々な屋台をグルグル回っていると、矢沢君がいきなり「かき氷食いたい」なんて言い出して、あたしと矢沢君はイチゴ味とメロン味のかき氷をひとつずつ頼むことにした。


「美味しいね。やっぱり夏はかき氷だよね」

「あぁ、まあな」

スプーンでかき氷をザクザクと刺しながら食べていると、いきなり矢沢君に「ふ」と笑われてしまった。

「な、何?」

「お前、舌真っ赤」

「あ、だっ、そう言う矢沢君だって舌緑だよ」

そっちの方が気持ち悪いよとつい口走ってしまったら、矢沢君は物凄く嫌な顔をしてあたしをじっとりとした目で睨んで来た。その視線に居心地が悪くなってあたしは咄嗟に話題を変えた。

「か、かき氷ってさ、絶対シロップより100%のジュースかけた方が美味しいよね」

「あ?それだとかき氷じゃなくてただのシャーベットみたいになんじゃねえの?」

「え?あ、そっか!やっぱシロップじゃないと意味ないのか」

「奥が深いね、かき氷って」なんてそんなくだらない事をひたすら喋っていると、隣の矢沢君が急に「ふ」と口角を持ち上げて笑みを零した。


「お前ほんとおもしれーな」

「え?」

可笑しそうに笑っていた矢沢君が、不意にあたしの頭の上に手をポンと置いた。そのまま頭をポンポンと撫でられ、「バァカ」と囁かれた瞬間、何故だかは分からないけれど、いきなり顔の温度がボッと上昇した。
< 109 / 270 >

この作品をシェア

pagetop