これが、あたしの彼氏です。【完】


「…や、やめてよ」

「あ?何照れてんだ」

「て、照れてないよ!何言ってるの!」

あたしが大きな声で反論すると、矢沢君は「そんなムキになるなよ」なんて憎たらしい事を言って来る。一体、誰の所為だと思っているんだ。

「それからお前、早く食わねえとかき氷液状になってんぞ」

「え、うわ、どうしよう…」

「もうそのまま喉に流し込めよ」

矢沢君にそう言われ、あたしは渋々液状と化したかき氷を一気に喉へと流し込んだ。するとあのかき氷特有のキンとした痛みがこめかみに襲って来る。
そんなあたしを見た矢沢君は、またしても口角を持ち上げて楽しそうに笑っていた。


それからの数十分後、矢沢君はホットドッグとタコ焼きと焼きそばを難なくたいらげていて、あたしはその隣でとうもろこしとカステラと綿あめをぺろりとたいらげた。
射的で勝負をしたり、ヨーヨー釣りをしたり、くじ引きをしたりして夏祭りを満喫していると、もうすぐ花火大会が始まりますと言うアナウンスが耳に入って来る。

それを聞き、二人して花火が見えるという絶景ポイントに急いで移動すると、さっきまでとは比べ物にならないほどの人の量で溢れ返っていた。
< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop