これが、あたしの彼氏です。【完】
その人混みの多さに嫌気を差した矢沢君が人混みに埋もれて見たくないと言ってきたので、何とか人が少ない場所を見つけ、土手沿いになっているところへ腰を下ろした。
此処へ来る途中、つい買ってしまったリンゴ飴をパクリと頬張りながら、花火が打ちあがるのを今か今かと待ち望む。
「このリンゴ飴、すっごく美味しい」
「ふーん。俺食った事ない」
「えっ勿体ない。林檎飴すっごい美味しいのに」
あたしが軽い気持ちでそう言うと、矢沢君は何を思ったのか不意に口角を持ち上げて不敵にニヤリと笑った。
「…矢沢君?どうしたの?」
「……あ?別に」
「え?……ちょっ――――」
―――一瞬、空いた口が塞がらなかった。
「……甘、」
「………!!」
矢沢君はいきなりあたしの林檎飴に手を伸ばしたかと思うと、不意に横からパクリとリンゴ飴を一口取り上げて来たのだ。
「…………な、」
「お前よくこんなもんが食えるな」
「ちょ、な、何するの…!?」
食べられた後を見て、いやでも顔の温度が上昇する。
「あ?お前が美味しいって勧めるから、味見しただけだろ」